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- 常設展示 池田満寿夫
常設展示のご案内PERMANENT EXHIBITION
池田満寿夫 版画
1F/第3室
池田満寿夫は、20代で版画家として世に出て、瞬くうちに世界的な作家として名を馳せましたが、その作風は30代のアメリカ留学を境に大きく変化しています。
前半の作品を特徴づけるのは最初期のドライポイントで、作家のエネルギーを画面にぶつけるかのような奔放な線描があふれています。ドライポイントというのは銅版画の技法の一つで、銅の板を先のとがったニードル(針)でひっかき、直接線を描いて版を作るものです。最も単純な技法であるだけに、作家の描線がそのまま表現されることになります。
このドライポイントとエッチング(腐食銅版画技法)を駆使して、池田は誰にも真似のできない独自のプリミティブ(原始的)な画面を創造し、ヴェネチアやサンパウロなど名だたる国際版画展で受賞を重ね、高い評価を得ました。
後半となる1966年(32歳)以降の作品では、アメリカのタマリンド工房で習得したリトグラフ(石版画)が表現の主となります。リトグラフは石版画の名のごとく、大理石の板に油性の描画材で絵を描いたのちに薬品処理を施し、描かれたところだけにインクが付着するようにして、版画を刷るもので、筆であれクレヨンであれそのままのタッチが作品に反映されるものです。ニードルなどを使用する銅版画に比べると、紙やキャンバスに描く時と同じ感覚で版を作れ、仕上がりも直接紙に描いたものとたいへん近いものとなります。池田は新たな技法を習得するとともに、滞在したアメリカでポップカルチャーに魅せられ作品もポップアート的なものとなっていきました。
池田の二つの時代を要約すると、前半は表現的で自由な線描を主とし、後半は理知的な写実描写による構成が目立つということがいえましょう。皮肉なことに技術的には進歩したはずの池田のリトグラフ作品よりも、なぐり描きともいえそうな前半の作品に、天才といわれた池田の版画の魅力を感じる人が多いことも事実です。
そういう意味で、池田満寿夫が最晩年に制作した陶彫の「般若心経シリーズ」は、版画では失われたはずの池田本来の奔放さが蘇った佳作といえましょう。パラミタミュージアムでは、収蔵する200点を超える池田満寿夫の版画作品の中から、毎月入替展示して、版画と陶彫のコラボレーションをお楽しみいただきます。
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花園にて
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姉妹たち
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水